古泉が、本当の性格をあらわにした次の日。
俺は、既に日課を通り越して習慣となっていて、
いったい何を活動としているのか分からないSOS団の部室に行く途中だ。
「こんにちは」
もう少しすれば部室に着くところで、後ろから誰かに声をかけられた。
振り返れば、ニコニコスマイルで突っ立っている古泉がいた。
「なんか用か?」
「いえ、特にありませんが・・・」
なら、声をかけないでくれ。心臓に悪い。
昨日のこと忘れたとは言わせん。
「覚えていますよ。
 ・・・いつもどおりに接すると決めたのですが、難しいものですね」
困りました、というかのように、古泉は深く息を吐く。
いつの間にか部室に着いた俺達は向かい合わせに座る。
古泉はオセロと取り出した。
こいつの行動一つ一つに、違和感を感じるのはどうしてだろうね。
・・・いや、その理由は考えてみるまでもない。
「おい」
「なんでしょう」
何が面白いのか、ニコニコと笑っている古泉。それが気に食わない。
「・・・いや、なんでもない」
俺は何を考えているんだか。
『本当の自分を出せ』なんて言える筈がないだろう。
古泉だっていやいやながら、
この性格でいることに努力しているはずだ。
それを、俺の我儘によって、頑張りを壊してしまうのは古泉に悪い。
「そう・・・ですか」
何のことかわかっていない顔をしながら、
オセロの盤を取り出しやり始める古泉。
だが、内心はどうなのか・・・。
超能力者、副団長である古泉でも、昨日見せてくれた古泉でも、
俺にはあいつの考えていることなんか想像つかん。
どちらも同じ古泉のはずなのに、どうしても違う人間と考えてしまうのは、
性格がかけ離れているからだろうか。
にしても、俺はどっちの古泉が好きなんだろうか。
「さあ・・・」
多分、『あなたの番ですよ』と言うのを、こいつは続けなかった。
「涼宮さんは、来ませんよね?」
・・・そういえば今日、ここに来る前にハルヒが
『みくるちゃんの衣装を買いに行くから、今日は活動中止よ!』
とか言ってた気がする。
『有希とみくるちゃんには言っておくから、キョン、あんたは古泉君に言っておいて』
団長命令よ!と要らん言葉を付け足しながら教室から出て行っていたな。
「知っていたのか?」
「偶然、彼女に会いまして」
成る程。なら、オセロをやらずに帰ってもいいんじゃないのか?
「あなたといるのは楽しいですから」
と、胡散臭い笑みを浮かべながら言う古泉。
だが、一瞬にしてその表情を崩す。・・・昨日の古泉が俺の前に現われた。
こんな所で、素を出しても大丈夫なのかよ。
俺の心配をよそに古泉は喋る。
「それに、あの表情と性格は疲れるんだ。
 けど、お前以外の奴にはみせれねーし」
まあ、長門に見せるのは問題ないけどなと呟く
おい、古泉。昨日の事覚えているなら、
何故わざわざ、俺が喜ぶような事をするんだ。精神的にきついぞ。
確かにさっきはそう思っていたが・・・。
「そのさっきお前が思っていたこと、やってやっただけだ」
別にいいだろというかのようにニヤリと笑う古泉。
こいつ。俺の気持ちを弄んでやがる。
何で俺はこんな奴を好きになったんだ。
いっそのこと、壁に頭打って死んだほうがいいかもしれん。
「お前のあんな顔を見て見ぬ振りなんか出来るか」
「・・・なんか言ったか?」
「なんもいってねー」
俺は気になったが、古泉がそういうならしょうがないだろう。
変な古泉だな。

その後、俺達はオセロをやったのだが・・・
「・・・強すぎだろ」
基盤を見てみると、白く染まっている。白は誰か。
それは、さっき本性を見せた古泉一樹だ。
「てめぇが弱すぎるだけだ」
つまんなさそうに古泉は言う。本当は此処まで強いとは・・・。
つまり、何だ。弱点はないのか。
「オレは勉強なんかよりも、こっちのほうが得意なんだ」
オセロを片付け、俺と話す古泉がどこか楽しそうなのは気のせいか?
「素の自分を出せるからだろ」
・・・思いかけず返事が返ってきた。って
「おい、心の中を読むな。お前は地域限定超能力者であって
 人の心を読める力はないだろ」
「あんたの考えていることは簡単に読めるんだよ。
 オレは機関の奴らに色々と教えられてからな」
「・・・そうか」
その表情はどこか怒りに満ちていて、詳しいことは聞くな、と言っているようだった。
俺は少しだけでもいい。古泉のことが知りたい。そう思った。
その思いは多分、古泉を好きになってからだろう。
俺が余計なことを考えてないようにするためかどうかは知らんが、
古泉は心配させないように
「キョンが気にすることはねぇ」と言った。って
お前までその名で呼ぶのか。
だが、気に入ってるわけでもないあだ名を呼ばれただけなのに、
心臓の鼓動がこんなにも煩いとか。
俺はホントにこいつが好きらしい。

どんな、古泉だろうと、な。

(古泉一樹を助けて)

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